ソルベ_1
「ふたり」の前
彼に名前を与えたのは両親でも彼が信じるものでもなかった。
彼の両親は若く、育児や生命には興味が無かったので赤ん坊に名前をつけずに教会の扉の前へ放置した。神父は赤ん坊を見つけると孤児院へ渡した。孤児院の院長は赤ん坊に「ソルベ」という名前を付けた。
孤児院で彼は彼と似たような子どもたちと同じように教育を受けた。大人たちは子どもたちを愛しているように見えたし、子どもたちは大人たちを信頼しているようだったことを成長した彼は覚えている。しかしソルベはこの孤児院には友達もいなかったし、大人になってから感謝する人間もいなかった。なぜだかわからないが、この施設にいる間、ずっと寂しさを感じていた。
大人たちはそれを知っていたのか彼にぬいぐるみを与えた。だが少年は寂しさを紛らわすもっとよい物を知っていた。
その孤児院は清潔だとはっきり言える場所ではなく、夜中はねずみがあらわれた。手の中で動く温かいねずみがソルベは好きだった。話を聞いてくれるし、返事もしてくれる、それにけんかもない。ねずみは毎晩違うねずみだったが、そのぬくもりはいつも同じでぬいぐるみよりもずっと心地よかった。
しかしある日、彼の同室の子どもがソルベの机の中を見てしまい、ソルベの安心は大人たちに知られてしまった。以降彼は大人たちのひとりと行動しなくてはならなくなり、夜は手を縛られることになった。
それからはとくに大きな事件もなく、あったことといえば他の子どももするようなけんかややんちゃに片づけられるようなことだけだった。ソルベにとって大きな安心は無く寂しさもあるが、平穏と言える日々を過ごしていた。
そして大人たちがソルベを「他の子と何か違うんじゃあないか?」と思うようになったころ、彼の血縁を名乗る女性が孤児院へやってきた。程なくしてソルベはその女性に連れられて孤児院を出、その後戻ることはなかった。
女性に連れられた先で、一人の少年と出会った。
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